年間指導計画がない?アメリカの多様性を尊重した保育:インタビュー
今回は海外の園での勤務経験者へインタビューした内容をお届けします!
第1回目 「アメリカの保育について」
こにぃさん(@coniconi521)にインタビューしました。
はじめに
「海外で活躍されている(いた)保育士さんにインタビューしたい!」また、「それを興味ある方にブログでシェアしたい!」という私の思いからこにぃさんにTwitterでお声かけさせていただいたところ、快くお引き受けくださいました。
私は今アメリカに滞在していて、プリスクールのボランティアも2ヶ所経験しましたが、それでも知らなかった現地の園での様子や内容をたっくさん、お伺いしました。アメリカの幼児教育情報にご興味のある方はぜひ、最後までご覧ください。
(以下、ちー:ち こにぃさん:こ で表示します)
ち:
(ドキドキ…)こ、こんにちは〜 はじめまして!
本日は、まだ知名度の低いわたしのブログへのインタビューを快くお引き受けくださりありがとうございますー!
こ:こんにちは!いえいえ(笑)お会いできて嬉しいです!
(やりとり省略…)
ち:では早速インタビューさせていただきますが、自己紹介をお願いします。
こ:はい!私は兵庫県出身です。アメリカでは2007年〜2018年の間住んでいました。日本の大学を卒業後すぐに渡米したので日本での保育資格は持っていません。
日本の大学では英語文化学科を専攻していたので、当時は「英語の先生になろうかどうしようか、保育も興味あるな〜」とぼんやり考えていました。海外で英語を勉強しながら何か新しいことを見つけたかったので渡米することにしました。
カリフォルニア州のオレンジカウンティに住んでいましたが、現在は日本に戻り、子ども向け英語教師をしています。
ち:アメリカでの滞在は11年!渡米後すぐは何をされていたんですか?
こ:カリフォルニア州にあるサンタアナコミュニティカレッジからカリフォルニア州立大学(フラントン校)に編入しました。そして、大学卒業後はカリフォルニア州立大学(ロングビーチ校)で大学院を卒業しました。
ち:え、えええ…!日本の大学卒業後、さらにアメリカでも大学!そしてさらに院まで!?バイタリティ溢れてますね…!アメリカで保育のことを学ばれたんですか?
こ:ね。どこまでいくんだよって感じなんですけど…(笑)
まず大学の科目を見たときに「幼児教育」という項目があって「これは絶対にやってみたい!」と、すぐに決めました。その後学んでいくうちに「もっと学びたい!もっと学びたい」とどっぷりハマってしまって…
ち:大学ではどのような学びのスタイルでしたか?また、その保育に魅了されたポイントは何でしたか?授業での英語は問題ありませんでしたか?(質問攻め…)
こ:まず英語に関しては日本の大学で勉強していたので、TOEFLのスコアを持っていました。なので、語学学校に通わずにすぐにカレッジに入れましたが、現地に行った時は全然喋れなかったんです(笑)実際に使う英語は速いし、新しい単語が次々出てくるので授業はついていくのに必死でした。
こ:大学では年齢関係なく本当に色々な人がいたので、「学びたい!」という生徒の意識が高かったように思います。また私もそういった方々に触発されて向上心に繋がりました。また、幼児教育科では実際に保育園へ行って勉強をする観察学習がたくさん必要なんです。その決められた時間をクリアできるように自分で園に予約して観察学習を重ねていきます。それとは別に実習が150時間くらいありました。
ち:え!自分で予約を取るんですね!その実習はどうでしたか?
こ:はい。観察学習では座学で学んだことを実際に見に行き、「実際はどうかな」と観察することができました。ただ、子どもたちの日常を崩すことがないように、そっと隅から観察に徹するルールがありました。でもそういった繰り返しでさらに「知りたい」が生まれたんだと思います。(実習についてさらに詳しく知りたい方は下の※へ)幼児教育の科目は全部楽しかったです!!
ち:はは〜。まさにラーニングですね。座学だけではなく経験とともに繰り返していく。
こ:そうなんです。観察学習をするうちに本当に色々な先生と出会えて、専門的なワークショップ(研修)も多彩にあるのでとても楽しかったです!例えば保育園の環境ひとつでも、子どもになったようにワクワクしてしまいました。そして教育者向けのワークショップがオンラインで受けることができ、膨大な量があります。専門誌が家に届くシステムもあります。働く前も働いた後も常に教養を深めていけるんです。
ち:それはいいですねー!専門的な情報が常に手の届くところにあるんですね。
こ:はい。アメリカは情報をシェアする力に長けていると思います。
ち:ちなみにアメリカはビザを取得することが厳しいと言われていますが、どうしていました?
こ:私の場合、結婚後は就労ビザを使いましたが、それまではずっとOPTのビザを使っていました。
ち:…オーピーティー?(略称をすぐに忘れてしまう…そしてフリーズ…笑)
こ:初めて働いた園は、大学内でしたので学生ビザだけで働けました。本来学生は就労許可が出ないのですが大学内であれば、働けます。実際に学内のコーヒースタンドや売店、国際交流室で働いている友人はたくさんいました。
※OPTとは。こちらに貼ります。
https://www.us-lighthouse.com/life/visa/opt.html
ち:オレンジカウンティはロサンザルスの近くですよね。住居環境はどうでしたか?
こ:ディズニーランドのすぐ近くに住んでいました。
ち:う、うらやましいー!!海が近くにあって綺麗で、人で賑わっているイメージです。
こ:ディズニーは結構高いので行かなかったのですが(笑)
物価がどんどん上がっているのでそういう面では住みにくくなっているかもしれませんが、天気が良く、過ごしやすかったです。
ち:物価が高いとおっしゃっていたように金銭的な質問をしたいのですが…日本から渡米するときはどれくらいの資金を持って、どのように過ごしましたか?
こ:渡米時は日本からある程度まとまったお金を持っていきましたが、渡米後は勉強しながら働いたお金や結婚式のために貯めたお金を大学に費やしたり…あとは親や主人からサポートをしてもらいました。
ち:結婚式の資金を…!すごい決断です。でもそれくらいの決意で自己投資されたんですね、すごい。大学時代好き勝手やっていた自分が本当に恥ずかしくなる…。(笑)
ち:アメリカの大学院を卒業された後はどこで働かれていたんですか?
こ:
まず、大学院を卒業する前に4つの園で働きました。全てカリフォルニア州オレンジカウンティ内です。
はじめはコミュニティーカレッジを卒業する前に、大学付属の州立プリスクールで働きました(3歳以上の保育園)。そこは大学時にインターンしていたところでしたが、先生が推薦してくれたので働くことができました。
2つ目の園は、会社が経営しているところで(日本でいう株式会社運営のような園)全国展開しているプリスクールでとても大きな園でした。州立大学卒業後にOPTビザを使って就職しましたがそこで働いている間に結婚をして、就労ビザに切り替えました。
3つ目は私立のモンテッソーリ園でした。モンテッソーリの園で働いた後に大学院に進学し、
その後、4つ目のヘッドスタートという政府が支援する無償の幼児教育プログラムを提供している園で働きました。ここでは、低所得者層の子供達しか通えないので様々な事情を抱えた子供達が通っていました。
ヘッドスタートについて(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%88)
ち:先ほどおっしゃっていた「ワクワクした保育の環境」というのを具体的に教えていただけますか?
こ:まず、アメリカではコーナー保育が重視されていて、部屋の中で絵本コーナー、変身(ごっこ遊び)コーナー、言語、感覚、数字、科学、アートなどのコーナーに分かれています。子どもが何をしたいか自分で選択しますが、そのコーナーの中に先生が発案した遊びや製作も入っているのでみんなで一斉に活動する時間は少ないです。もし、一斉にやる活動があっても「やりたくない子」って絶対いるんですよ。その場合はやらない場合は「〜していてね」とルールを作っていました。
ち:なるほど。子どもも大人も無理なく、ワクワク、いきいきと過ごすことって大事ですよね!
ち:働く上で大変だったことはありましたか?
こ:どの園でも教育のポリシーがあって、それを把握した上で自分がどのように動いているのか把握して、説明できる必要があると思います。というのは、アメリカは特に訴訟大国なので訴えられることは余程のことがない限りはないですが、保護者からの意見で問題になることもあるので「その時に自分がどう動いてどういう思いでやっていたか」をきちんと説明できないと働けないので大変だな、と感じました。
ち:確かに…それは大変そう…でもそういった部分でも英語力が必要ですね。
ち:アメリカは様々な国の人がいますが、文化の違いで苦労されたことはありましたか?
こ:
アメリカは自分で意見を主張しないといけない国なので、個人の主張を重視しない日本の文化で育った私には、最初は本当につらかったです。英語力もままならないし、何て主張したらいいのかもわからなくて、悔しい思をたくさんしました。違う文化から来たということで、差別された事や冷たくされた事もありました。
それから人にもよるんですが、年齢も立場も関係なく人は平等であるという考えの人が多いので、歳が離れている人や上司とも対等な立場で接する事ができます。それは良いことでもあるのですが、逆に、日本で育った私には日本での上下関係に慣れてしまって「肩書き」というしがらみから抜け出せない時期がありました。そして自分より上の立場の先生よりも出しゃばらないようにと気を付けていた事が、この先生は受け身で仕事が出来ない人だというレッテルを貼られたことがありました。アメリカって移民の文化だから異文化理解があると思われがちなのですが、結構異文化に無知な人多いんです。なので異文化理解のない人との交流は大変でした。
ち:確かに、私も住んでいて地元の人とコミュニケーションとるときに、遠慮したり受け身でいるとなぜかどんどん埋もれていくような、不思議な感覚があります。(笑)でも本当は自信がないけど自信があるふりをしたり、自分からオープンになれば結構面白いこともあるんだな、と思います。年齢や経験問わず、積極性が大事なんですね!
言葉の壁に関して言えば、本当に色々な国の子がいましたが、特にスペイン系の子どもが多かったので英語が母語でない子供達とのコミュニケーションは大変でした。スペイン語を話せる先生に時々サポートしてもらったりしていました。スキンシップをたくさんとり入れ、絵やジェスチャーを交えながら伝えていました。でも言葉が出てくるようになると「あぁ、しゃべれた~!」と嬉しかったですよ。
保護者とのやりとりは言語がわからないとコミュニケーションが取れないと大変でしたが、先生たちと助け合いながら対応していました。
ち:働く先生たちの雰囲気はどうでしたか?
こ:先生たちも色々な国男女関係なく多様なので、やりとりが楽しかったです!
会議する前に、ポットラックといってそれぞれ先生が食べ物や飲み物を持ちよったものを職員室に並べて、みんなで食べなから会議をすることもありました!
ち:た、楽しそう~!
ち:保育士の業務的な内容はどうでしたか?
日本では保育園も幼稚園も年間、学期、月、週、日案があって、(週と日案はどちらかになっているところもある。)その案のねらいが達成できたかという反省会もありましたが…
こ:
私は実際に日本で案のねらいを書いたことがないのですが、とても大変だと聞きました。アメリカでは、前の週に次週のレッスンプランを作成していましたが、年や学期のねらいは全くありませんでした。はっきり言って、子供達はそれぞれ各自のペースで発達していくのに、年や学期のねらいを作成する事に効果があるのかは疑問に思います。正直なところ先生方の時間の無駄なのではと思っています。
ち:あれは本当に大変でした。日本の保育園の場合、個人の記録とクラスの案、両方提出の義務があるので結構悩みながら書いていました。
こ:アメリカでは観察ベースです。自分でひとりひとりの子どもの様子を見て記録して、その子ども達の発達に合わせてカリキュラムを作って行きます。基本となるチェックリストがあって、
ランゲージ・ソーシャル・エモーショナル・アプローチラーニング・フィジカル、など細く50項目くらいに分かれています。それは大体3ヶ月ごとにあって、3ヶ月後にまたどうだったか考える。保護者ともそれを基準に共有します。年間目標はありません。
子どもひとりひとりの目標は変わっていくので。
ち:は…(衝撃)…素晴らしい(拍手)
それだとひとりひとりに合わせているので保護者もわかりやすいし、保育者もサポートしやすいですね!
ち:最後に、私はモンテッソーリ園での就労経験がないので、正直あまり詳しくないのですが、モンテッソーリのいいなと思った点を教えてください。
こ:
私は当時一歳児と二歳児のクラスを担当していて、小さな子供達はまだ先生が提示した手順を覚えるのが難しかったりするのですが、それでもやってみようと模倣するのをよく目にしました。一つ一つの教具には手順があり、自由におもちゃで遊ぶといったアプローチではないので、人によっては自由ではないと感じるかもしれないけれど、三歳未満でも子どもの自立心がとても育っているなと感じることが多かったです。
遊び道具はおもちゃではなく教具と呼ばれ、遊びもお仕事と呼びます。英語では本当に“Job“という言葉使います。生活に繋がるような取り組み(水や小さなもののコップを使って移し替えたり、文字や数字を学んだり…)が多彩なので、小さな子でもオムツを自分で取ってきたり、自分でランチのセットをしたり、飲み物も自分で入れていました。先生の声掛けや子供達が行うお仕事はすべて自立につながっているところが素晴らしいなと思いました。
ち:ありがとうございます…!これで質問は以上になります。
本当に勉強になりました!!こにぃさんの益々のご活躍を心より応援しております!
★実習について(こにぃさんより詳しい情報)
大学の中で、プラクティカムというクラスが最後にあって、これが日本の実習に当たると思います。仕事をしながら授業をとっている先生方もおられるので、まとめて三週間といったものではなく、「学期の間に必修となっている時間分の実習をこなして、課題を提出して下さい」といった感じです。なので、私は週に三回三時間くらい行っていました。自分の働いている園で実習をされている先生もいました。一番大変だったのは、自分の考えたテーマで一日クラスを担当するといった課題でした。
私は「魚」を選んだのですが、おままごとエリアはシーフードレストランが出来るように小道具を作ったり、サークルタイムに使う魚がテーマの歌やダンス、絵本を選んだり、自由遊びの時間用のレッスンや、外のアクティビティーも魚のテーマで何か考えなければならなかったりで、とても大変でした。時間配分も考慮しないといけないし、しかも下手な英語ですべてをこなさなければならなかったので、てんやわんやでした。今思えばいい思い出です(笑)
おわりに
私は海外に出て、日本の保育の良さをたくさん感じました。例えば料金ひとつ挙げると、カリフォルニア州ではフルタイムで保育園に預けたら最低でも月に15万円くらいかかり、兄弟が一緒でも割引はありません。日本では無償化になり、働いている親であれば誰でも無償で子どもを預ける資格があります。他にも日本の保育園のきれいな環境や保育士の質で良いと思うことはたくさんあります。私も色々なことを学ばせていただきました。
ですが、「働き方」や「国のルール」となるとまだまだ疑問点が多いのが正直なところです。
今回、年間カリキュラムの捉え方が特に印象的でした。
1年前、例えば自分で「英語を流暢に喋るようになる」と目標を掲げて、それを達成するために内容を考えても、1年後達成できなかったことなんてあると思います。また、自分のやりたいことも経験とともに変わったり、逆に急にコツを掴む瞬間もありますね。大人でもそれは同じ「発達」だと思います。
幼稚園で勤務していた時に年間、月のカリキュラムを作っていましたが、「全員同じようには成長しない」と頭ではわかっていても学年ごとの統一の目標があるので、個々を尊重すると他クラスと比べて「まとまりがないのではないか」と指導法に困ったり、サポートの仕方が悪いのか、どうサポートしたらいいのか悩むことがよくありました。
日本の国が掲げている指針でもある「子どもの主体性を伸ばす」ための保育は本当に1クラス最大35人、先生ひとりで実現できるのでしょうか…
アメリカの園を調べていると「モンテッソーリ園が多いな」と感じていましたが、個々の発達を大切にしていて、その発達のスピードに合わせてサポートを考えていく、という国の方針に合っているからなのかもしれないと思いました。
私もまだまだリサーチ、勉強を続けていきます!
最後まで読んでくださりありがとうございました。
アメリカで保育を大学で学びたい!働きたい!こにぃさんの活躍を応援されたい方はぜひ、こにぃさん@coniconi521 とTwiiterで繋がってくださいー!
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